リオ五輪予選で3試合終えて、勝点1。リオ五輪に出場できないという致命的なミスをおかしてしまったなでしこジャパンは、ここで「佐々木則夫と澤穂希によるチーム」という一つの黄金期というサイクルを終え、新たなチーム、進むべき道を模索する期間に入るべきだろう。
目次
佐々木則夫と澤穂希のなでしこジャパン
ワールド・カップ優勝やオリンピックの銀メダルなど数々の輝かしい成績を収め、
低迷していた女子サッカー人気を爆発させたなでしこジャパンの活躍は、佐々木則夫と澤穂希が作り上げたチームによって成し遂げられた。
そして今、澤の引退と時を同じくして、その「黄金チーム」も解体されるべき時が近づいている。
まさかのリオ五輪予選敗退
もちろん、現時点でまだ敗退が決まった訳ではないが、
当然のことながら、なでしこジャパンはリオ五輪には出場できないだろう。
誰もが盲目的に「なでしこジャパンはリオ五輪に出場する」と思っていた。
しかしその「当たり前の想定」は、高いアジアの壁によって簡単に跳ね返された。
初戦がオーストラリアという組み合わせの不運もあったが、順調に滑りだすはずだった船がいきなり転覆の憂き目にあったのだから、
選手だって浮足立つだろう。
心と身体のバランスが崩れているかのように、ちぐはぐなプレーで自滅していったなでしこジャパン。
「澤穂希がいれば...」
という声が聞かれるのは致し方無いことかも知れないが、それはまったくの無意味である。
おそらく澤穂希がチームにいたところで、結果は同じだっただろう。
ピークを過ぎたなでしこジャパン
佐々木則夫率いるなでしこジャパンは、2011年のドイツワールド・カップ優勝、そして翌年のロンドンオリンピック銀メダルという快挙によって、
日本になでしこ旋風を巻き起こした。
しかし、チームはこの時をピークに、ゆるやかな下降線をたどっていたと言えるだろう。
アルガルベカップなどで若手を試すもフィットせず、結局は、「佐々木則夫&澤穂希チルドレン」たちがそのままスライドするカタチで4年後のカナダワールド・カップに挑んだ。
下馬評を覆した快進撃と準優勝は、なでしこの底力を感じさせる素晴らしい戦いぶりで感動を呼んだが、
全ては決勝のアメリカ戦に象徴されていたように思う。
満身創痍の日本は、すでに成長曲線の最下層にあり、終わったチームであったのだと。
進まない世代交代と進歩したライバル国
世代交代が進まず停滞するなでしこを尻目に、
ライバル国たちは、日本が女子サッカーに持ち込んだショートパス主体のコンパクトなパスサッカーを次々に導入し、
レベルを上げていく。
一人残された日本は、「過去の遺産」をなんとか活用して世界のトップランクに君臨し続けたが、
ついにアジア予選をも突破できないという辛酸を舐めることになった。
澤穂希というレジェンドがいなくなった今は、逆に言えば良いタイミングである。
何をするかといえば、「チームの大改革」である。
ながく監督を務めてきた佐々木則夫監督は退任してもらう。
彼はなでしこ史上最大の功労者であるが、あまりにも長い時間、なでしこの関わり過ぎた。
監督を交代し、新しい風、新しい血、新しい考え方や新しいサッカーを取り入れていかなければ、
これ以上の進歩は得られないだろう。
澤穂希の引退、リオ五輪予選敗退というのは、
そのきっかけとしては最適なものだ。
ニューヒロインの登場が待たれる
なでしこは、ヒロインを求めている。
澤穂希に変わる、日本女子サッカーのアイコン。
それは、これまで数々のタイトルを獲得してきたベテランではなく、
まだ名前も知られていない新しい力であるべきだ。
おそらく、日本女子サッカーはこれから数年間、暗黒の時代に突入するだろう。
なでしこリーグの観客動員数は減り、メディアの露出も少なくなり、新たな道を模索するしかない代表チームは、試行錯誤の中で苦戦するだろう。
しかしそれは、新しい「黄金期」を迎えるためには、避けられない試練である。
必ずなでしこは、再び大輪の花を咲かせるだろう。
その記念すべき日が、東京で開かれるオリンピックであるなら、それはまたドラマである。
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