反逆の井上、刑事人生をかけた覚悟と拳銃「マンホール」<下巻>ネタバレ24〜26話

マンホール 下巻

筒井哲也による、未曾有のバイオホラーサスペンス「マンホール」のネタバレ分析レビュー。一人の老紳士が起こした驚愕の社会浄化作戦とは?

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マンホール<下巻>24話「溝口健」

笹原市保健所ではトラブルが起きていた。
一度は陰性と診断された溝口の血液から、ミクロフィラリアが発見されたのである。
フィラリアの特性として「定期出現性」というものがある。
フィラリアの子虫であるミクロフィラリアは、媒介する昆虫の吸血時間に合わせて宿主の末梢血に現れるという現象だ。つまり、媒介する昆虫、この場合ヒトスジシマカが昼間、吸血活動をする場合、ミクロフィラリアはそれに合わせて「吸血される場所」に現れるということだ。
溝口の場合、怪我をしたのが午後5時半、血液検査をしたのが6時半近くだったため、検査時間が遅すぎ、本来は存在していたはずのミクロフィラリアを検出できなかった。

溝口はその頃、笹原市からほど近い槇野市に向かったという黒川の行動を追っていた。
槇野市で起こっている犯罪を調べたところ、先月から槇野市中町で16件の連続不審火が起きていることがわかった。
「犯罪者を浄化する」という黒川の行動規範に則れば、次のターゲットがこの放火魔であってもおかしくはない。

捜査本部は、黒川の犯行は田村への個人的な復讐であると考えているようだが溝口は違った。
黒川の目的が田村への私刑であるならば、マンホールの中に監禁した時点で半殺しにするほど痛めつければ済むことである。それをしなかっったのは、別に目的があったからに違いない。
黒川が「私の目的は、この世にはびこるクズどもを浄化することにある」と言っていたのは、本気かもしれないと溝口は思い始めていた。

溝口と井上は、車で槇野市へ向かう。
その車中、井上は、黒川が放火犯の身柄を確保して、マンホールに監禁するのは非常に難しいという見解をのべる。溝口もその点については同意するが、「これはこれで面白い」と笹原市でのパニックを知ってつぶやいたという黒川の思惑に、「嫌な予感」がしていた。
突然、運転中の溝口の様子がおかしくなる。顔を押させて苦しそうにしたかと思うと、そのままハンドル操作を誤り、電柱に激突した。激しく回転してやっと停車した車。井上が顔を上げると、血塗れの溝口の右目はフィラリアによって浸食されていた。

24話考察

「ミクロフィラリアの定期出現性」という特性に気がつかなかったことで、実はフィラリアに感染していた溝口は、陰性と判定されてしまった。予想外のバイオテロという事態を前にして、保健所が完璧な対応をとれるとはとうてい思えない。溝口の場合は、運が悪かったとしか言いようがないだろう。
迷走を続ける捜査本部を尻目に、井上と溝口のコンビは、黒川の次のターゲットになりえる「犯罪者」を隣の槇野市で発見する。最近、世間をにぎわしている放火魔である。
マンホールに犯罪者を監禁してフィラリアを植え付けるという事件は、事件台となった堀川、そして復讐の本命である田村による犯行で一応の完結を見たはずだ。
関口美香のアパートで起きてしまったパニックは、結果的に未曾有のバイオテロになったが、本当にいくつもの偶然が重なって起きた、黒川にとっても予想外のハプニングである。そのハプニングを目の当たりにして、新たな計画を思いついたのか、それとも元から用意してあったものなのかは定かでないが、これまでのようにただ単にターゲットを監禁して一人一人に制裁を加えるというやり方はとらないだろう。

マンホール<下巻>25話「覚悟」

検査の網をのがれ、実は感染していたフィラリアに片目をつぶされ、事故を起こした溝口に、井上は口移しで薬を飲ませる。
捜査員の中から感染者が出たという事実は、捜査本部を動揺させた。

溝口を失った井上は、ここでとんでもない行動に出る。
笹原署で保管されていた証拠品の拳銃と実弾が盗難されるという事件が発生。犯人は井上だった。
井上は、拳銃を持って、一人黒川を追う。
溝口に口移しで薬を飲ませた時、彼の血液からフィラリアに感染している可能性があったが、彼女は「どうでもいい」と考えていた。
「今、一人の刑事として72時間以内に黒川宏を捕らえる」
それが彼女の思考のすべてだった。

25話考察

年齢、性差を越えて「相棒」として事件の捜査に当たっていた溝口と井上のコンビに、決定的な別れが訪れた。
井上の溝口に対する想いは、先輩刑事に対する尊敬や信頼だけでなく、はっきりと「愛情」と呼べるものだった。
フィラリアに脳を侵され、事故で朦朧としている溝口に危険を省みず口移しで薬を与えるという行為は、「愛」以外の何物でもない。
証拠品の拳銃を持ち出し、単独で犯人を追うということは、警察官という組織人としては最低・最悪の行動だが、彼女には時間がなかった。
井上がフィラリアに感染しているとすれば、リミットは長く見積もっても72時間。それまでに黒川を逮捕することが、彼女が自分自身に与えた使命だった。
彼女の中で、溝口への想いというものは確かにあるだろうが、今回の行動は、それ以上に「一人の刑事」として成すべきことを考えた時、「きっと溝口ならこうする」という選択をした結果であるように感じる。
黒川にこれ以上の罪を重ねさせないこと。不幸な被害者を増やさないこと。「相棒」である溝口が井上に叩き込んだ「刑事の生きる道」を彼女は今、実践しようとしている。

マンホール<下巻>26話「異変」

槇野市の第一小学校。深夜にウサギ小屋へ忍び込む男の影。注射器にたっぷりのミクロフィラリアをつめこんだ黒川は、おびえるウサギを優しく抱き寄せ、針を突き立てた。

翌日、学校ではウサギ小屋に進入した不審者が問題になっていた。不審者は一度破って入った金網を丁寧に補修しており、ウサギには異変はないように見えた。
教師たちは最近、この地域で頻発している放火事件と関連付けて問題視。しかし、ウサギ飼育の担当で、その様子をブログで紹介していた坂崎教諭は、ウサギ小屋への進入者と放火魔が同一犯という考えには疑問を抱いていた。

そこで連絡をしたのは、友人の辰巳紀子。坂崎の相談を受けた辰巳は、金網が補修されていたという点に違和感を持ち、犯人は「何かそこではっきりと目的を果たし終えた」という印象を持ったと伝える。
彼女は警察と協力関係にあるハッカーの喜多嶋の「上司」とも言うべき存在だった。辰巳は喜多嶋にある調査を命じる。

拳銃を持ち出し、捜査本部から離れた井上は、一人、槇野市に入った。そこへ喜多嶋から電話が入る。
彼は、フィラリアが人間にしか発症しないと前置きした上で、ここ最近、槇野市中町にあるインターネットカフェで12月10日の夜(笹原市でパニックが起きた日)に検索サイトを使ったある人間の履歴を調べていた。
検索に使われた言葉は、「槇野市」と「動物」の2ワード。そこから導き出された検索結果は、一件目から順番に「槇野市ふれあい動物園、ペットショップアニマルランドまきの、うさ日記(坂崎教諭のブログ)となっており、まさに異変が起きた動物施設と場所・順番が一致していた。
黒川が槇野市に移動したのは、12月10日の夜。槇野市の動物施設で異変が始まったのも、その翌日からだった。

喜多嶋は、自らの考える黒川象を述べ始める。
「黒川って男は、基本的に無駄なことはしない主義」であり、「常に目的の最短経路」を目指している。「目的のためなら足がつくこともお構いなし」で「今、槇野市の動物施設を歩き回って<仕掛け>を作ろうとしている」はずだ。
そして、四件目の訪問先として予測したのが、通称「犬屋敷」といわれる槇野市内の民家だった。

26話考察

槇野市の小学校で起きたウサギ小屋のいたずら事件。付近で頻発する連続放火事件の犯人と同一視するのはナンセンスだが、「何かあってから」責任をとらなければならない大人たちにとっては、最善の策ということになるだろう。
小学校の教諭である坂崎と喜多嶋の「飼い主」である辰巳が知り合いだったことは、井上、そして捜査本部にとって史上最大の幸運だった。
彼女の指示で喜多嶋が調査・分析を行ったことで、いち早く井上は、黒川の足取りと目的を知ることができた。
黒川の目的は、おそらく動物に注射したミクロフィラリアによる「時限式のバイオハザード爆弾」を作成することだろう。

動物には発症しない新型フィラリアは、誰にも気付かれることなく夏を迎え、最盛期を迎えたヒトスジシマカによって、爆発的な速度で人間界に広まっていく。そうなったらもう、その拡大を止めることは不可能だろう。

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