始まった寄生虫感染の連鎖!筒井哲也の漫画「マンホール」<上巻>ネタバレ7〜9話 狂気の写真家・水野が夢見る欲望なき世界

漫画マンホール上巻

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マンホール<上>第7話「写真家の男」

マンホールからはいあがった井上は、ボツワナ紀行と題された本を回収していた。マンホール内部の調査は、溝口が読んだ保健所のスタッフに委託される。

堀川は、写真家「水野正章」について語る。彼の見立てでは、「写真家」というのは嘘だろうということだった。世界中を回っているにしては日焼けをしていない。道楽半分の金持ちというのが堀川の見立てだ。
水野は堀川に昼飯をおごると言ってレストランに誘い出す。
水野はそこで、「カッコーの巣の上で」という映画を持ち出し、ロボトミー手術について語り始める。
ロボトミー手術=前頭葉白質切断術は、患者のこめかみに穴を空け、前頭葉の白質部分を除去する術式である。水野は現代では「残虐な手法」として廃れてしまったロボトミー手術の有効性を説き、外科的処置を放棄した現代の精神科医療を非難した。
それをふまえた上で、堀川に「何が言いたい?」と問われた水野は、「私の目的はこの世にはびこる屑どもを浄化することだ」と語る。
世の中で起こる不条理な凶悪犯罪に手を染めクズに対して、今こそ物理的なアプローチをとるべきだと主張する水野は、その「クズ」の一例としてギャンブル狂いで親に虐待を加える堀川の息子を挙げた。
「もうこんなクズどもは、いっそ能手術でも施して地下施設へ隔離した方が社会全体にとって有益だと思わないかね?」
そして水野は、小さなガラス瓶に入ったフィラリアを取り出し、「遠いボツワナの地で、有害なクズどもを浄化する方法を私は手に入れたのだ」と笑った。

第7話考察

「カッコーの巣の上で」は、1975年公開のアメリカ映画で、第48回アカデミー賞の作品賞を受賞している。主演のジャック・ニコルソン演じるマクマーフィーは、精神異常者であると装い刑務所での強制労働から逃げ出した男が、精神病院の内部で行われる非人道的な行いに反旗を翻し、次第に患者たちの心をも動かしていくという物語。
この中で、主人公のマクマーフィーは、問題はありながらも非常に人間味のある魅力的な男として描かれるが、ある事件をきっかけに強制的にロボトミー手術を受けさせられ、最後には人間性の欠片もない廃人のようになってしまう。
映画としては、水野が言うように「ロボトミー手術」事態を悲劇として描いているが、彼の主張は「ロボトミー手術は正しい判断」だったというものだ。つまり、主人公マクマーフィーは、社会にとって「有害なクズ」とうことになる。
水野の目的は、いわゆる「不条理な凶悪犯罪者」に対して、強制的な排除行為、彼の言葉を借りれば「浄化」をすることであるらしい。そのターゲットとして、どこから仕入れたのか、完全なる「ろくでなし人間」である堀川の息子を選んだのだ。

マンホール<上>第8話「片目族」

井上が「施設」から持ち帰った「ボツワナ紀行」という本には、アフリカの秘境に暮らす「片目族」の生態が記されていた。

彼らは一様に「洋風のポロシャツにハーフパンツ」という出で立ちで、20人ほどのがっちりした体型の男性だった。彼らには部族の特色である歌と踊りをこよなく愛するような風潮はまったくなく、規則正しい生活をしてまるで軍隊のようにタロイモ栽培に従事している。彼らは皆共通して、右目が白濁し失明していた。著者は、この地がある種の「流刑地」なのだと確信した。

著者は写真家の水野正章。堀川の母親が言っていた「写真家」とのつながりをまだ警察はつかめない。

堀川の父親・晴生に対して、写真家・水野正章を名乗る初老の男はこう語ったという。

水野が持っていたフィラリアは、人間の脳の視床下部、その外側部を好んで食す。その部分は、人間の欲望を司り、例えば食欲を感じれば、そこが激しく「発火」するのだという。

フィラリアを媒介する蚊などの昆虫は、人間の吐き出す二酸化炭素=炭酸ガスに反応して吸血行動を行う。

溝口たちがマンホールの「施設」を捜索しているころ、関口美香のアパートでは、羽化した「フィラリアを媒介する蚊」が無数に発生し、炭酸ガスを吐き出し続ける苗床と化した美香の体を刺し続けていた。

そして蚊は、炭酸ガスを追って部屋の外へと飛び出して行き、近隣に住む主婦の手に噛み付いた。

第8話考察

マンホールのパテやバールと同様、「施設」に残されていたボツワナ紀行という本も、犯人のメッセージと考えて良いだろう。

犯人は、自らの罪が露見することを恐れていない。それどころか、「早く追いついて来い」と言わんばかりに犯罪の断片を残していく。

これは、犯人の計画がすでに「阻止不可能」なところまで進行しているという余裕の現れではなかろうか。

現に、堀川と雨宮の二名がフィラリアによって死亡し、もう一人、片目の潰れた全裸の男がマンホール内をさまよっている。

関口美香はフィラリアに感染したどころか、大量発生した蚊の苗床になり、そこから飛び出したフィラリアを媒介する蚊が近所の主婦を吸血したことで、感染は確実に広まっている。

マンホール<上>第9話「確信犯」

堀川晴生と水野の会話は続く。

水野の説明だと、フィラリアによる感染で死ぬことはないという。ただし、「自律的な社会生活は困難になる恐れもある」可能性は否定できなり。さらに「自己の欲望と折り合いをつけ規則正しく行動するものだけがこのフィラリアと共存できるのだ」と語る水野の右目は、フィラリアの感染により白濁していた。

水野はロボトミー手術の復活もならず、医師免許をもたない自分が手術を行うことはできないが、フィラリアを使えば同じことが、血の一滴も流さずに目的を果たせると語った。

水野はフィラリアの発見を「時代を変える力を持っている」と自己評価した。

溝口は、この犯罪の首謀者を「確信犯」だと推測した。

自分の発見したフィラリアが世のため、人のために役立つものだと本気で信じ込んでいる。警察の捜査が進むことで、この事件が明るみになり、騒動になる故に、犯行現場に「ヒント」を残した。ただし、計画の準備中に邪魔が入るのはいただけない。そのため、一時的な潜伏先として選んだのが、日本全国どこにでもあるマンホールだった。

溝口は、水野を逮捕するのは難しいことではないとしながらも、第二第三の模倣犯が出てくることを懸念していた。

その頃、マンホールの奥底では、片目のつぶれた全裸の男が、ふうふうと荒い息を吐きながら、出口を求めてさまよっていた。

第9話考察

水野は、「新種のフィラリアに感染し、脳の欲求をつかさどる部分を食い荒らされること」が「ロボトミー手術」と同じ効果を持っていると考えている。つまり、人間の欲望を抑制し、規則正しい行動をさせるということだ。

ここで考えなければならないのは、フィラリアに感染している水野自身が、「フィラリアで世界を変えたい」という立派な欲求の元に行動を続けているということだ。

ここでボツワナ紀行に出てきた「片目族」の例を参考にしてみる。彼らは、皆一様に同じ格好をして、ただひたすら軍隊のようにタロイモを栽培し続けているという。それはつまり、「何かを得るという目的のための行動を一心不乱に続けることはできる」ということを意味する。

水野が強靭な精神力と使命感によってフィラリアと共存することが出来たとすれば、食欲、物欲、性欲といった自らの行動の邪魔になる「欲求」はフィラリアによって排除され、残った「フィラリアで世の中を変える」=「タロイモを作ると同義」という「行動」にのみ集中できる環境を脳内に作り上げたということになるだろう。

マンホール<上>10〜12話ネタバレにつづく。

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